池田名誉会長が語る―― 「平和の世紀」の大道 21世紀の世界と日本を見つめて 第3回=完  「対話」と「協調」のソフトパワーで―― 国連中心に平和の大潮流を!! 民衆交流こそ戦争防止への基盤 20世紀の悲劇を繰り返すな  ――アメリカでの同時多発テロ事件や、中東和平プロセスの危機など、世界では対立と分 断への動きが強まっています。  「戦争と暴力の世紀」と呼ばれた20世紀の悲劇を繰り返さないためには、何が大切でし ょうか。  池田名誉会長 一にも、二にも「対話」です。  20世紀の悲劇は、政治や経済など、あらゆる分野で国家と国家がぶつかり合ってきたため に起こったものが多い。  21世紀は、そうではなく、?人間の顔″を表とする時代に転換すべきです。  トップとトップが胸襟を開く「首脳外交」から、民衆同士が心を触れ合う「民間外交」に いたるまで、重層的に対話の潮流を高めていく挑戦が重要となるでしょう。  私自身、厳しい冷戦対立の時代から、世界各国の人々と「対話」を重ねてきました。  一民間人として、早くから中国との国交正常化に向けて行動し、ソ連との交流の扉を開い てきたのも、その信念からです。 師との誓い込め中国、ソ連を訪問  ――冷戦の表中、社会主義諸国を訪問することは、風当たりが強かったと思いますが。  名誉会長 当時、「仏法者が、宗教敵視の国に、なぜ行くのか」などと非難され、圧迫も受 けました。  しかし私は一歩を踏み出した。アジアの平和、世界の安定を、戸田先生は祈り、遠望され ていたからです。その誓いを込めて、日中国交正常化の提言(1968年)も、ソ連の初訪問(74 年)も、先生が「原水爆禁止宣言」を発表された9月8日にしました。  今や、両国との友好は大きく広がりましたが、これからの時代は、ますます民衆交流を深 めていくことが大事になる。  民衆同士が互いに相手のことを深く知り、友情を結んでいけば、戦争を起こそうとする動 きに対するブレーキとなるはずです。  戦争や対立の背景には、互いの疑心暗鬼がある。だからこそ、民衆自身の手で「対話の窓」 を広げていく努力が必要となってくるのです。 「革命」に人生を捧げたリーダー  ――先生は、これまで世界の識者と1500回を超える「文明間の対話」を推進してこられ ました。その中で最も印象に残っている方は、どなたでしょうか。  名誉会長 それぞれ、印象深い方たちばかりですが、やはり、中国の周恩来総理でしょう か。傑出した人物でした。  お会いしたのは、1974年12月、総理が亡くなる1年余り前のことです。入院されていた 北京の病院で、お会いしました。  ご病気なので、遠慮申し上げたのですが、総理のたっての希望もあり、お会いできたので す。  10億もの中国人民を、断じて守り抜いていく。一人残らず幸せにしていく――その「責任 感」と「慈愛」が全身から放射していました。今も忘れることはできません。  あと挙げるとしたら、南アフリカのマンデラ前大統領、ゴルバチョフ元ソ連大統額でしょ うか。  ブラジルの?ペンの闘士″アタイデ氏(ブラジル文学アカデミー元総裁)、チリを民主化に 導いたエイルウイン元大統領、キューバのカストロ議長……、きりがありませんが、やはり 民衆のために死をも覚悟して行動を貫いたリーダーたちには、不撓不屈の信念がある。  そして、「革命」に人生を捧げた人たちには、深き哲学、理念がある。内から発光する?何 か″を持っているものです。 国連の活動を 積極的に支援  ――世界平和の実現のためには、民衆次元での対話の促進とともに、国連の役割が焦点と なってきます。21世紀の国連は、どうあるべきと思われますか。  名誉会長 さまざまな限界や制約があるにせよ、国連が戦後の半世紀を通じて、世界の大 多数の国が参加する?対話の場″となってきたことの意味は、実に大きい。  未来の人類のためにも、国連を大事にすべきです。  「対話」と「協調」を軸とするソフトパワーにこそ、21世紀の国連が歩むべき大道はある。 紛争防止にしても、軍事力による解決ではなく、予防重視で取り組んでいくことが求められ ます。  また、国連強化の要は、NGO(非政府組織)をはじめとする民衆パワーとの連携にありま す。  SGI(創価学会インタナショナル)は、これまで一貫して国運支援を続けてきましたが、 今後とも国連の活動をさまざまな角度から支えていきたいと思います。  日本も、安保理の常任理事国入りばかりに固執するのではなく、環境や人間開発など、大 きな役割を果たせる分野はたくさんあるのですから、そうした得意分野でリーダーシップを 発揮することが望ましいのではないでしょうか。  紛争解決の分野では、先ほど述べたように、「予防外交」など紛争を激化させないための事 前の措置に力を注ぐべきでしょう。それが、国連憲章や日本国憲法の精神に適う道だと思い ます。 「信頼」なくして「外交」は立たず  ――続いて、アジアの平和について、おうかがいしたいと思います。 、首相の靖国参拝や教科書問題などで、中国や靖国など近隣諸国との関係悪化が懸念されま すが、日本のアジア外交は今後、どうあるべきでしょうか。  名誉会長 「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」(永井清彦訳) とは、かつてお会いした、ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の有名な言葉です。  過去に対する真摯な反省、歴史認識から外交を出発しなければ、日本の将来は、国際的な 信頼開係を築くことが難しくなるのではないか。  靖国参拝などは、憲法上の疑義に加えて、「アジアの中の日本」という観点からも問題が多 いと言わざるを得ません。  「信頼なくして外交なし」――私は、このことを戸田先生から徹して教えられました。中 国、韓国と揺るがぬ友好関係を築いてこそ、日本の平和の道があり、アジアの平和の道は開 かれる。  その一助となればとの思いから、私どもも民間レベルでの教育・文化交流に努めてきまし た。  来年は、日中国交正常化から30周年、韓国と日本によるサッカーのワールドカップの共 同開催、中韓国交正常化10周年という、3国にとって意義深い佳節を迎えます。  「日中韓国民交流年」ともなっており、北東アジアの平和を前進させる絶好の機会です。 両国との友好関係を永遠ならしめるように、日本が新たな決意で行動していく出発点になれ ばと願っています。 「日米関係」の深化が不可欠 中国 韓国との友好拡大を 日中国交正常化30周年を迎えて  ――今も、話に出ましたが、来年は日中国交正常化から30周年です。  先生は、その?道なき道″を先駆者として開かれてきたわけですが、21世紀の中国につい て、どのような見通しをお持ちですか。  名誉会長 中国は、WTO(世界貿易機関)加盟を果たすなど、大きな躍進を遂げています。  1974年の初訪中以来、これまで何度も中国を訪れていますが、毎回、その発展ぶりには目 を奪われました。  現在の「改革・開放路線」の総説計師と呼ばれた?小平氏とも、2度お会いする機会があり ました。今日の中国の隆盛は、氏の敷いたものが、時を経て大きく実ったのではないかと思 います。  それと中国の強みは、「漸進主義」にあるといえましょう。孫文も力説していたように、何 ごとも急進的なやり方は、破壊と混乱を招く。  21世紀を迎えて、中国の存在は、ますます重みを増しています。経済に限らず、国際社会 における意思決定、ルールづくりに中国が深く関与していくことは、世界の調和と安定にと っても欠かせません。  先月、久しぶりにゴルバチョフ氏と語り合いましたが、氏も中国を世界の大きな焦点とし て注目しつつ、「アジアは、さまざまな形で協力し、信頼を深め合う環境づくりをしなければ ならない」と述べておられた。 米中の橋渡しを  ――最近、中国とアメリカの関係改善が図られています。米中接近の中で、日中関係、ま た日米関係はどうあるべきでしようか  名誉会長 日本と中国には、仏教伝来や遣唐使をはじめとして、長い人間同士の往来の歴 史があります。  戦時中の不幸な歴史を乗り越えて、長期的な展望に立ちながら、どこまでも誠実に友好関 係を結んでいくことが大切でし創価大学は、戦後、中国からの留学生を初めて受け入れまし たが、中国のいにしえの言葉にも、「十年樹木、百年樹人」とある。百年のスケールで考えれ ば、両国を担う青年に焦点を当てていくことが、万代の友好の基盤となります。  未来志向に立って、両国の間で青年交流を積極的に推し進めることが強く求められていく と思います。  この日中関係とともに、日米関係の深化も欠かせません。  戦後の日本の歩み、価値観の共有性などを考えても、日米関係という基軸は半永久的に守 るべきものだと思います。  日中、日米、どちらかを優先させるというのではなく、日本が両国の?橋渡し″を担ってい くぐらいの気概で臨むことが重要でしょう。 「永遠の隣人」韓国と信頼築け  ――最後に、「北東アジアの平和」という角度から、韓・朝鮮半島の今後と、日韓関係の未 来について、おうかがいしたいと思います。  名誉会長 私は今、韓国・済州大学の趙文富(ちょうむんぶ)前総長と対談を進めていま す。  韓国の方と対談を連載するのは今回が初めてですが、非常にたくさんの反響をいただいて いる。  これほど近くにありながら、日本は韓国に対し、深い友好関係を築くことがなかなかでき なかった。それを改める一つの?突破口″になればとの思いで、全力で取り組んでいます。  韓国は、高き文化の伝統があり、日本の「文化の恩人」の国でもあります。しかも、不屈 の民であり、近隣から侵略されても、すべて、はね返す戦いを続けてきた。  その誇り高き民族の魂を踏みにじったのが日本でした。植民地支配の中で行われた残虐で 非道な行為は、いくら謝罪しても、しきれるものではありません。  日本は、昔は中国、今はアメリカというように、たえず?劣等感″のようなものがあって、 その裏返しとして、他国に対して威張りたがるといった?屈折″があるように思われてならな い。  そうではなく、韓国の人々を尊敬し、韓国の人々から信頼されるようになって初めて、日 本も「大人」になるのではないかと思うのです。  韓・朝鮮半島の今後については、紆余曲折はあるにしても、平和と安定に向かう流れは変 わることはないでしょう。そのために、日本としてできることがあれば、助力を惜しまない ことが大切だと思います。  ともかく、日本にとって韓国は「永遠の隣人」です。互いに尊敬し合い、信頼し合ってい く努力が絶対に必要でしょう。                          (おわり) 2001.12.28付 SP