第27回「SGIの日」記念提言C=完 2002-1-29         創価学会インタナショナル会長 池田 大作 5月の国連 子ども特別総会で――― 「子ども最優先」の原則誓い 世界教育憲章の採択を 再生可能なエネルギーの導入を  第三の案は、再生可能エネルギーの積極導入を図り、化石燃料に依存する社会システムを 転換する道を開くための提案であります。  この問題に積極的に取り組んできたUNEP(国連環境計画)では「太陽光、風力、波力な ど、環境にやさしいエネルギーの導入こそ、新千年紀に人類が取り組まなければならない喫 緊の課題」と位置づけ、昨年3月に「当然の選択-再使用可能なエネルギー技術と政策」と題 した報告書を発表しています。  先進国の間でも、そうした問題意識が高まっており、2000年の九州・沖縄サミットを受け て「G8再生可能エネルギー・タスクフォース」が発足し、昨年のジェノバ・サミットに報 告書が提出されました。  そして、ジェノバでのG8共同宣言でば「将来への遺産」の章に、「我々は、再生可能エネ ルギー源が我々の自国の計画において十分に考慮されることを確保するとともに、他の国々 も同様の行動をとることを奨励する」と謳われ、サミットの宣言として初めて、その推進が 打ち出されたのであります。  ヨーロッパでは、すでに具体的な計画が動き始めており、昨年9月にはEU(欧州連合) が再生可能エネルギーに関する指令を採択し、2010年までに総エネルギー消費量に占める比 率を倍増させることが目指されています。一方、途上国の間でも、UNDP(国連開発計画) が「持続可能な農村エネルギープロジェクト」の一環として、バングラデシュの小さな村落 に太陽エネルギーを導入するなど、さまざまな活動が試みられています。  そこで、先進国、途上国に限らず、こうした取り組みを全地球的な規模で進めるための合 意、いわば「再生可能エネルギー促進条約」のようなものを、WSSD(持続可能な開発に関 する世界サミット)の場で検討してみてはどうかと、私は提案したい。 地球憲章を採択  WSSDに関連して、もう一つ言及しておきたいのが「地球憲章」です。 持続可能な未来 に向けての価値と原則を謳った「地球憲章」は、ミハエル・ゴルバチョフ元ソ連大統領と地 球サミサトで事務局長を務めたモーリス・ストロング氏らを中心とする地球憲章委員会で起 草を進めてきたもので、2000年6月に最終章案が発表され、本年の採択が目指されていま す。  私どもSGI(創価学会インタナショナル)では、その趣旨に賛同し、これまで世界各地で 支援行事を開催してきたほか、平和研究機関の「ボストン21世紀センター」においても草 案づくりに多角的な視座を提供するためにシンポジウム等を行い、研究書を発刊してきまし た。  「地球憲章」には、環境問題に限らず、公正な社会と経済、民主主義、非暴力と平和に関 する項目など、今後のグローバル・ガバナンス(地球社会の運営)を考える上で欠かせない 包括的な行動規範が盛り込まれており、21世紀の人類の指針となるべきものです。共通のビ ジョンを持ち、そこに向かって皆が行動していく努力なくして、地球の希望の未来は開けま せん。  その意味でも、国際社会の一致した合意をもって「地球憲章」が採択できるようにしなけ ればならないと思います。  そして、採択された後も「地球憲章」が人類共闘の基軸となるように、草の根レベルでの 粘り強い意識啓発が欠かせないでしょう。  SGIとしても、地球憲章委員会や他の団体と協力しながら「地球憲章」の各国語版の翻訳 や、その内容と趣旨を解説した各国語版のハンドブックやビデオ作製などのサポートに取り 組んでいきたいと思います。  また環境教育という観点から、子どもたち向けに、地球憲章のメッセージを親しみやすく、 わかりやすくしたパンフレットの制作も必要となるでしょう。  現在、WSSDに向けて、子どもたちによるポスターや作文のコンテストが行われる予定と なっていますが、今後も継続的に、地球の未来を担う子どもたちに焦点を当てた環境教育に 力を入れることを国際社会の合意としていくべきです。  SGIでも今後、さまざまな形で、環境教育の普及に努めていきたいと思います。 混迷する世界の犠牲者は子ども  これとあわせて、本年5月に行われる「国連子ども特別総会」に関連して、いくつか提案 をしておきたい。  これは、1990年の「子どものための世界サミット」で合意された目標の達成度を振り返り、 21世紀の新たな行動計画を定めるために行われるもので、昨年9月に開催が予定されながら も、テロ事件によって延期を余儀なくされたものです。  混迷する世界の中で、常に犠牲となるのは子どもたちであります。18歳末満の子どもは地 球上に21億人いますが、その健康や成長が守られている国で暮らすことのできる数は1割 にも満たないといわれます。  「子どものための世界サミット」以降の10年間で、予防可能な病気で亡くなる子どもの 数は大きく減少し、基礎教育を受けられる子どもの数も増加するなど、一定の進歩が見られ ました。  しかし、サミットの行動計画は国際的に幅広く認知されなかったこともあり、目標は十分 に達成できていない状況にあります。そこでユニセフ(国連児童基金)では、「子どもたちの ための世界的連帯」というネットワークを立ち上げ、政府だけでなキNGO(非政府組織) や教育機関、報道機関などの参加を呼びかけています。  「国連子ども特別総会」も、その一環として行われるものであり、ユニセフのベラミー事 務局長は「今日の健康な子どもと明日の健康な世界のつながりを強調することこそ、子ども 特別総会の目的である」と位置づけています。  SGIでは、これまで「子どもの人権と現実」展をはじめ、ユニセフを支援する活動を行っ てきました。同展は、ユニセフ創設50周年を記念して96年6月に開幕して以来、アメリカ 各都市や南アフリカなどを巡回しているもので、5月の特別総会に連動する形でニューヨー クでの開催も予定しております。 子ども権利条約譲定書に批准を  私は、今回の特別総会を、各国のリーダーたちがすべての分野において「子ども第一」「子 ども最優先」の原則を貫くことを誓約し、子どもたちのための同盟″を広げていく出発点 とすべきであると訴えたい。  そして、その第一歩として、子どもたちの人権を著しく侵害している、子どもの人身売買 や子ども兵士を禁じた「子どもの権利条約」の二つの選択議定書=注5=を、各国が批准す ることを強く求めたいと患います。  加えて、特別総会の場か、もしくは近い将来に「世界教育憲章」の採択を目指してはどう かと提案したい。  これまでにも、識字教育や初等教育などの基礎教育をすべての国で推進するための「万人 のための教育世界宣言」=注6=があります。  これを発展的に深める形で、教育環境の整備のための国際協力とともに、21世紀の教育を 展望して、「子どもたちの幸福」を第一義に掲げた「教育のための社会」の理念を柱としなが ら、世界市民教育、平和教育を地球的規模で実施するための共通規範を打ち立てるべきでは ないかと考えるのです。 本年は、日中韓の「国民交流年」  最後に、21世紀のアジアの平和を展望し、二つの提案をしておきたいと思います。  本年は、東アジアの3国である日本、中国、韓国にとって意義深い年に当たります。日中 国交正常化30周年であり、中韓国交正常化10周年であり、韓日共催でサッカーのワールド カップが行われるという三重の意義があることを潜まえ、「日中韓国民交流年」に定められま した。  3国による信頼醸成の取り組みは、99年にフィリピンで行われた「ASEAN(東南アジア 諸国連合)+3」金銭に出席した3国の首脳対話をきっつかけに進んできたものです。2000 年には首脳会談の定例化が決定したほか、昨年には外相会一議と経済関係閣僚会議を定期的 に開くことで合意、するなど、対酷の場の定着化が図られてきています。 アジアの恒久平和のために青年交流 女性交流と歴史の共同研究の推進を  今年の国民交流年も、こうした対話の中で決定をみたものであり、信頼と友好の絆を深め 合う絶好の機会となりましょう。  これまで創価学会では、アジアの平和を願い、中国や韓国との民間レベルでの交流に努め てきました。  本年も、中部青年部の企画で、日中友好の礎を築いた周恩来総理の生涯を紹介する「偉大 な指導者 周恩来」展が、今月、名古屋でスタートし、年内に計8地域の巡回を行う予定と なっております。  また私は現在、韓国・済州大学の趙文富前総長との連載対談を行い、日韓友好の道を語り 合っています。 「平和の文化と女性」展を開催  私は、アジアの平和は、どこかの国がリーダーシップをとって進めるというものではなく、 各国が友好を深め、その輪を幾重にも広げながら、時間をかけて形成していくものでなけれ ばならないと考えます。  本年の国民交流年では、「日中韓ヤングリーダーズ交流プログラム」の実施が予定されてい ますが、こうした交流をアジア全体に広げる形で定着化させ、次代を担う青年、とくに女性 たちの間で友情の絆を結ぶ機会を積極的に設けるべきではないでしょうか。  たとえば、毎年の「ASEAN+3」会議に並行する形で、開催地で交流行事を行いながら、 互いの文化や歴史への理解を深め合うプログラムを実施したり、首脳たちとの対話の場を設 け、女性たちの率直な声を各国のリーダーに伝えていくことなども考えられましょう。 創 価学会でも本年、「平和の文化と女性」展を各地で開催する予定となっていますが、こうした 機会に合わせて、アジア各国の女性との交流を深めていきたいと思います。 共通の歴史認識の土台をつくる  もう一つの提案は、アジアにおける共通の歴史認識の土台をつくるための共同研究の推進 です。  昨年も、日本の歴史教科書をめぐる問題が起きましたが、過去の歴史認識が近隣諸国との 緊張を高めるケースが、80年代以降、何度となく繰り返されてきています。  単に外交的な問題だけに限らず、歴史教育が子どもたちに与える影響の大きさを考えてみ ても、憂慮すべき点があるといえましょう。  この点、歴史学者のエリック・ホブズボーム氏は『歴史論』(原剛訳、ミネルヴァ書房)で、 一部の歴史を「人間のもっと広いコンテクスト(文脈)から切り離す」危険性を強く戒め、 「歴史家は、どんなに小さな世界に目をむけていても、普遍性を求めなければならない」と 述べています。  2度の世界大戦の舞台となったヨーロッパでは、歴史教育をめぐる2国間対話や多国間対 話がさまざまな形で試みられており、92年には12カ国の歴史家が中心となって編纂した『ヨ ーロッパの歴史』も発刊されています。  同書の内容には賛否両論あるようですが、対話や協議を通じて自国のみに偏らない歴史認 識のあり方を追究しようとしたことの意義は大きいのではないでしょうか。  私は、アジアにおいても、同様の挑戦が行われてしかるべきだと考えます。  真摯に過去を見つめることは、真撃に未来と向き合うことと同義です。「対話」を軸に耕運 の歴史認識の土台を築く努力を積み重ねていくことは、アジアの平和を展望する上でも欠か せないと信じるものです。 「対話拡大」を合言葉に前進!  アジアの平和に限らず、「自己規律の競争」「人道的競争」に根差した「対話」「信頼」「協 調」こそ、21世紀の地球社会、地球文明の構築への基軸となるべきものです。  牧口初代会長は、『創価教育学体系』の中で、「受力の生活−依他的生活」でも「自力の生 活−独立的生活」でもなく、「授力の生活−貢献的生活」へと人間の生き方を転換することが 肝要であると訴えていました。  授力とは、今様にいえば「エンパワーメント(力を与えること)」になります。人々を励ま し、勇気と希望を与えながら、自他ともの幸福を 目指す、価値創造の「貢献的生活」を一人ひとりが歩むことが、やがて社会を変え、世界を 変え、時代を動かすことは間違いありません。  私どもSGIは、本年も「対話拡大」を合言葉に、各国で「よき市民」として行動しながら、 どこまでも「平和」と「共生」の人間主義の連帯を広げていきたいと思います。   (お わり) -------------------------------------------  注5 二つの選択議定書  2000年5月に国連で採択された「子どもの売買、子ども買春および子どもポルノに関す る選択議定書」と「武力紛争における子どもの関与に関する選択議定書」のこと。すでに、 それぞれ10カ国の批准があり、前者は今月18日に発効、後者は2月に発効することになっ ている。  注6 万人のための教育世界宣言  1990年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)やユニセフなどが主催し、タイで行われた世 界会親で採択された宣言。1億人以上の子どもが初等教育を受ける機会がない現状などに言 及した上で、「基礎教育の完全普及」を強く謳(うた)っている。