新・人間革命  羽ばたき 三十八 (2933)  発願式を終えると、正本堂建設委員会では、本山内の総合的な整備について検討を重ね た。  正本堂建立地内にある墓地や納骨堂の移転先の検討をはじめ、将来、大幅に増える登山 者が、安全に、快適に過ごせるよう、施設面などの見直しも真剣に行われた。  また、基本設計をもとにして作成された正本堂の設計図は、建設委員会で、さらに吟味 されていった。  一九六八年(昭和四十三年)の十月には、正本堂建立に合わせた整備計画の一環とし て、三門前の広場や三門橋の整備も竣工した。  特に、三門橋は、登山者が道路を渡らなくてよいように設置された歩道橋であったが、 高齢者のことも考え、一般の歩道橋に比べ、ゆったりした幅で、勾配にも余裕をもたせて いた。  建設委員長である山本伸一が最も心を砕いていたのは、参詣者の安全と至便であった。  やがて、日本は高齢化の時代を迎え、お年寄りも増える。また、体の不自由な人や、子 ども連れの家族もいる。  参詣に来た方々が、安全に、疲れず、快適に過ごせることを、彼は重要なテーマとして いたのである。  建築には、思想が表れる。どんなに立派で、厳かな建物であったとしても、人びとの安 全や快適さを二の次に考えた設計であれば、人間を手段とした権威づけのための伽藍と なってしまう。  正本堂も、それに関連したいっさいの施設も、人間を大切にする、人間主義の思想に貫 かれた建物でなければならないというのが、伸一の信念であった。  大聖人は、「末法に入って法華経を持つ男女の・すがたより外には宝塔なきなり」(御 書一三〇四n)と仰せである。  なれば、その方々を徹して守り、最高に大切にしていくなかにこそ、仏法はある。  伸一は、自ら総本山を歩いて、危険な場所はないかを見て回った。また、皆がどこに不 便を感じているかなど、直接、意見を聞いたりもした。  体の不自由な人や高齢者の話も参考にした。  そして、それを反映した建築になるよう、関係者とも、相談を重ねていったのである。 名字の言 2004.11.23 ▼九州に住む主婦が、大好きなコメのササニシキ栽培を思い立った。裏庭を耕し、蒔いた のは、なんと自宅の米びつの中の白米。毎日、水をかけたが芽が出ない。諦めた主婦が 言った。「九州ではやっぱりササニシキは無理なのね」――。農民作家の山下惣一さんが近 著で紹介している話だ(『食べものは みんな生きていた』講談社) ▼食卓から、「農業」の風景がますます遠くなっている。いま学校教育の現場で、知育・ 徳育・体育に加え、「食育」をという試みが広がっている。フランスの思想家ルソーも 「教育の原点は、食べることを通して自己保存できる知恵を学ぶこと」と記している ▼「食」や「農」を考えることは「生命の尊厳」や「環境問題」など、人間社会の未来の あり方を考えることにも通じていく。BSE(牛海綿状脳症)の問題や鳥インフルエン ザ、相次ぐ食品の偽装事件や遺伝子組み換え作物など、ここ数年「食の安全」を脅かす話 題が相次ぐ日本社会 ▼月刊誌『潮』で池田名誉会長と対談を重ねるスワミナサン博士が語っている。「人間と 食物の関係は、単に生命を維持するだけのものではなく、文化を支え、自然への畏敬の念 を支えるものなのです。食物は、人間を謙虚にします」(旬) 北斗七星 2004.11.23 ◆大阪府は今、自殺にかかわる体験談を募集中だ。自殺を考えるまで追い詰められながら 思いとどまった体験や、家族・友人を自殺で亡くした悲しみなどを冊子にまとめ、多くの 人に読んでもらうことで自殺防止に役立てようというのである ◆自殺者の増加傾向は続いており、昨年は全国で3万4427人にものぼった。交通事故 による昨年の死者数(7702人)の5倍近い人たちが自ら命を絶っているのだ ◆1997年までは年間の自殺者の数が1000人台だった大阪府も、98年に2000 人を突破した。それ以降は若干の増減はあるものの2000人台で推移している ◆「少しでも自殺を減らせる手立てになれば」(大阪府精神保健福祉課)との思いが今回 の体験談募集となったわけだが、果たして期待通りに体験が寄せられるだろうか… ◆精神科医の高橋祥友氏によれば、最低でも自殺者の10倍の未遂者がいるそうだ。ま た、既遂であっても未遂であったとしても、自殺者を知る5人から6人が「非常に深い心 の傷」を負うらしい ◆懸命に忘れようとしても忘れられない体験を、一つひとつ思い起こしながら文章に書き 著す作業は、「深い心の傷」に直接手を触れるようなものだろう。勇気を要することだ し、中には涙で濡れた原稿もあるはずだ。一編一編の投稿を感謝の思いで迎えてほしい。  (流) ☆「わが友に贈る」☆ 一度起きた問題は 二度と繰り返すな! 祈り切れ! 祈り抜け! そこに宿命転換が。