2006.6.14SP ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■  名誉会長アルバム「対話の十字路」 第32回     敦煌の守り人   常書鴻 画伯 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ◎最高峰へ! 辛苦(しんく)を越えよ!  とても頑固で、気むずかしい人だと聞いていた。  画家としてパリで得た名声を投げ捨てて、砂漠に埋もれた芸術を守るため、 人生を捧げてきた常書鴻(じょうしょこう)画伯。敦煌(とんこう)研究院の 名誉院長である。  それが、どうだ。  カメラマンがファインダーを覗くと、こぼれんばかりのこの笑顔!  1990年6月1日。午後には帰国の途につく、第7次訪中の最終日。宿舎 の釣魚台国賓館(ちょうぎょだいこくひんかん)に常画伯が駆けつけた。  初会談は80年に北京で。  「ちょうど10年が経ちました……」。感慨深げに語る名誉会長。  常画伯も、しみじみと。  「私は池田先生にお会いするたびに、魂が揺さぶられるような感無量の思い がこみあげてくるのです」  そして、「理想へ向かって進むには、人には見えない困難があります。だれ も知らないところで辛苦また辛苦を重ねなければならない。  私の経験から見ても、池田先生の大きなお仕事に、どれほどのご苦労があっ たことか。それを思うと万感胸に迫ってくるのです」。  語り終わって立ち上がった画伯は、香峯子(かねこ)夫人と両手で握手。そ の時、名誉会長の右手が後ろから支えた。  足の弱くなった画伯を、両側からいたわり、包みこむように、名誉会長夫妻 は玄関までともに歩んでいく。  名残は尽きない。車中から何度も手を振る画伯。  「それでは次は日本で」車が見えなくなるまで、名誉会長夫妻は見送り続け た。                 ◇  この年の11月。静岡の富士美術館で開かれた"常書鴻父子絵画展"に画伯 が来日。東京・渋谷の国際友好会館で名誉会長が歓迎した。  「少しでも早く、池田先生にお会いしたかった。きょうは本当にうれしいの です」  絵画展で感動を呼んだ、特別出展の作品も話題に。  それは、縦3メートル、横は5メートルを超える巨大なカンバスに、不屈の 信念と未来への希望を込めた「チョモランマ峰」。  ひときわ高く評価されている傑作だ。  権力の狂気が吹き荒れた、文化大革命。その中で、画伯は罵倒され、追放さ れ、豚小屋に住まわされた。人生は暗闇(くらやみ)に閉ざされた。  一番困難な時に、「文化の世界の最高峰を目指そう」「すべての艱難(かん なん)を乗り越えて進もう」と絵筆をとった"魂の名画"。  それと同じ主題で、同じ作品を描いた。名誉会長に贈るために。  「池田先生はこれまで、多くの人々に『希望』を与えてこられた方です」「こ の絵にふさわしい方は、池田先生をおいて他に断じてないと私は信じます」  この壮大な絵画は現在、東京牧口記念会館の1階ロビーに掲げられ、世界中 から訪れる賓客を迎えている。                    ◇  みずみずしい緑。水しぶきをあげて遊ぶ鯉。  東京・国際友好会館の庭園で、しばしの語らい。  砂漠での生活が長かった画伯は、ことのほか喜んだ。   ── 木々の緑が冴え、水辺があり、魚が戯れる。まるで『水滸伝』の世界 が、小さくなったみたいですね!  呵々大笑(かかたいしょう)する常画伯。  水に囲まれた天下の要塞・梁山泊。そこに集った豪傑たちは、宋江(そうこ う)を中心に、苦しみあえぐ民のために立った。  「『水滸伝』は、私も恩師・戸田第2代会長から徹底して読むように言われ ました。英雄たちをめぐって、いろいろと語り合ったものです」と懐かしむ名 誉会長。  常画伯は、悠久の過去と未来を見つめて言った。  「私たちの固い友情は、『水滸伝』の英雄たちの友情にも匹敵すると思いま す。  いな、池田先生とお会いし、ともに座って庭園を眺めていると、彼らにもは るかに勝る、強き永遠の絆(きずな)を確信できるのです!」 **************************************************************** 常書鴻(じょう・しょこう)  1904年中国・杭州市生まれ。94年逝去。青年時代にフランスで数々の 芸術賞を受賞。敦煌芸術に魅せられ43年に敦煌へ。約半世紀にわたり、その 保護と研究、紹介に尽力。敦煌研究院名誉院長などを歴任。池田名誉会長と重 ねた語らいは対談集『敦煙の光彩』(『池田大作全集第17巻』所収)に結実。 その一部は中国の教科書にも収録されている。同研究院は92年、名誉会長に 「名誉研究員」の称号を授与。創価大学の「文学之橋」の題字は画伯の筆。 ****************************************************************