2006.7.4SP ――――――――――――――――――――――――――――――――――  タイ国立メージョー大学名誉博士号授与式での名誉会長の謝辞 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆◆◆ 師匠こそわが人生の大学 ◆◆ 学生よ「民衆奉仕」の精神を持て     ── 〔英知〕〔忍耐〕〔挑戦〕の心を鍛えよ 【SGI会長の謝辞】  一、ご臨席くださいました創価大学、女子短期大学の先生方、学生、留学生 の皆さま方、本当にありがとうございます。  思えば、三十数年前、イギリスの大歴史学者トインビー博士の強い要請を受 けて、私は、ロンドンにある博士のご自宅にうかがいました。  そこで、迫り来る21世紀を見つめながら、山積された人類の諸問題をめぐ り、語らいを開始したのです。  親子以上の年齢差がありました。〈会見当初、博士は83歳、SGI会長は 44歳〉  トインビー博士は、"あなたとの語らいを後世に残しておきたいのです。こ れは私にとって実質的に最後の対談となるでしょう"と遺言を託すかのように、 一生懸命、語ってくださいました。  会見には、3人の通訳がつきましたが、それでも追いつかないくらいのスピ ードで、内容も多岐(たき)にわたりました。  私も真剣でした。  博士も真剣でした。  一切の妥協はありません。本当の一流の人は、厳しく、そして正しい。  1972年、73年と2年越し、40時間に及んだ語らいの中で、博士がお っしゃった。  「あなたは、将来、必ず、世界中の大学から名誉博士の栄誉を受けられるこ とでしょう」と。  あれから30年を経て、博士の言葉は現実のものとなりました。  本日の栄えある式典を、トインビー博士が、どれほど喜んでくださっている か。私の胸には、懐かしき博士の慈顔(じがん)が、思い浮かぶのであります (大拍手)。 ◆≪タイの思想家≫     ── 強い意志のない人生は価値のない人生である     ── 人間は気高い! 苦難と戦うゆえに。           勇気をもって試練に立ち向かうゆえに! ◆強く生きよ!  一、20世紀の貴国の作家シーブーラパーは、次の言葉を残しています。  「苦は楽より、人間にとって良き師匠となる」  楽しいばかりでは、人間は鍛えられない。苦しみこそ、人間を成長させる"師 匠"なのです。  同じく20世紀の貴国の文化の指導者ルワン・ウィチット・ワータカーンは 言いました。  「強い意志のない人生は、価値のない人生である」  学生の皆さんも、同じ理念で、強くまた強く進んでいただきたい。 ◆◆ プーミポン国王在位60周年と第1回国連「人間開発貢献賞」を慶祝 ◆自給自足できる平和国家目指し  一、先日(5月26日)、まことにうれしいニュースがありました。  私たちが、心から尊敬申し上げるプーミポン・アドゥンヤデート国王が、国 連から第1回の「人間開発貢献賞」(国連開発計画)を、晴れ晴れと受賞され たのであります(大拍手)。  国王は、「自給自足のできる平和国家」のビジョンを明快に掲げておられま す。  そして、そのための経済の哲学と新理論を提唱されて、人類の最重要の課題 である食糧問題の打開に、いち早く取り組んでこられました。  その偉大なる御業績が、改めて国際社会から高く評価され、賞讃されたもの であります。  私は光栄にも、3度にわたり、プーミポン国王を、バンコクのチトラダ宮殿 に表敬させていただきました。〈1988年2月、92年2月、94年2月〉  国王と私は、ちょうど同年齢です。国王からは、「同じ年齢同士として、励 まし合えることがうれしい」とのお話もいただきました。  英邁(えいまい)なる国王の御在位60周年、そして、このたびの御受賞を、 心よりお慶び申し上げます。  貴・国立メージョー大学には、プーミポン国王も訪問されております。  そして、この国王の理想を真剣に体現され、貴国の農業の大発展をリードし、 幾多の英才を育成してこられたのが、本日ここにお迎え申し上げた、高名な農 学者であられるテープ学長であり、貴大学の諸先生方であられます。  私たちは、最大の敬意と感謝を表したいのであります(大拍手)。 ◆卒業生が名学長として活躍  一、貴大学のある麗しき大地は、古来、タイ語で「百万の水田」という名の 王国が栄えた、豊かな実りの楽土です。  このタイ北部における農耕の起源は、人類史的にみても、最古に近いという 研究があります。  その豊穣(ほうじょう)なるチェンマイの天地にあって、貴大学は、タイ最 古の伝統を誇る農業教育機関として、崇高な歴史を刻んでこられました。  その名門大学より、最高に意義深き「管理学」の名誉博士号を賜り、これほ どの栄誉はございません。まことに、まことに、ありがとうございました(大 拍手)。  栄光の貴大学は、1934年、北部農業師範学校として、48人の学生から 出発されました。大学の建設に最初、どれほどの忍耐と努力が必要であったか。 創価大学の創立者として、私もよくわかるつもりです。  その栄えある1期生で、のちに母校の学長となられたのが、歴史に名高い、 亡きウィパート・ブンシー・ワンサーイ先生でした。  この1期生の名学長は、学生たちを心から励まし、勇気と希望を贈られまし た。そして、恵まれない地域の開発に最優先で取り組み、道を開いていったの です。  この学長は、退職してからも、各地で奮闘する教え子たちを激励に回り続け ました。まさに「人間教育者の鑑(かがみ)」として、私は涙が出る思いで命 に刻みつけております。  「創価教育の父」である牧口先生、そして戸田先生もまた、教え子のことを だれよりも大切にする教育者でありました。  創価大学の先生方も、学生に尽くしゆく偉大な教育者であっていただきたい ── そう念願しています。  なお、わが創価大学も、草創のキャンパスに勇んで集った1期生、2期生、 3期生を先頭に、卒業生が、あの地でもこの地でも、使命の道を雄々しく切り 開いています。  アメリカ創大生も、決然と活躍を開始しました。世界からお迎えしている留 学生も、立派に光り輝いております。本当にうれしい限りです。 ◆哲学性が根本  一、敬愛する貴大学には、民衆奉仕の尊き開拓精神が漂っております。  70年の歳月を超えて、貴大学は、気高き教育哲学を掲げ、英知と忍耐、そ してまた仕事への挑戦の心を鍛え、深き道徳性の光る指導者を陸続と育成して こられました。  こうした哲学性や倫理性を見失ってしまえば、どれほど高度な科学技術が発 達しても、人類の平和と幸福は確立できません。  この一点がわかるかどうか。それが未来を開くための重要な鍵といえましょ う。  だからこそ、確固たる人間教育が絶対に不可欠なのです。  この点について、私は新しく発刊されたロートブラット博士との対談集でも 論じ合いました。博士はノーベル平和賞を受賞した大科学者です。  これは、まさに博士の"最後の叫び"となりました。  〈ロートブラット博士は昨年8月、96歳で逝去。今月、対談集『地球平和 への探究』(潮出版社)が発刊された〉  一、貴大学の卒業生たちは、母校のことを、誇り高く「人生の大学」と呼ん でいます。自分が育った"魂の大地"への感謝と責任を、決して忘れない。素 晴らしいことです。  卒業生たちが、人々のため、社会のために労苦を惜しまず、友情と協調と連 帯を広げながら、誠実に貢献してこられたことは輝かしき歴史です。  私は、その伝統を調べれば調べるほど、心からの感動を覚えました。 ◆恩を返さぬ者は最も卑しい  一、きょうはアメリカから、著名なエマソン協会のワイダー会長も出席して くださいました。  信念の哲学者エマソンは、痛烈に叫びました。  「最も多くの恩恵を施す人は偉大である。多くの恩を受けつつ、その一つを も返さぬ人はいやしむべきもの ── 宇宙に於ける唯一のいやしむべきもので ある」(志賀勝訳『エマソンの言葉』西村霞店)と。  恩を知らない。恩を忘れる。名声や権力を得た人間の多くが、傲慢という毒 に蝕まれてしまう。  エマソンによれば、忘恩は、宇宙における最も卑劣な悪行なのです。  ともあれ、恩を忘れることなく、正義の哲学を貫き通すことこそ、正しき生 命の軌道です。  ワイダー会長も、偉大な探究と行動に邁進されて、亡き母上への報恩を果た されています。  エマソンは"傲慢な者に戦い勝つ、鋼鉄の心を持った正義の人物よ、出で よ! "と、強く待ち望んでやみませんでした。〈1844年2月、ボストンで の講演「若きアメリカ人」〉  傲慢な者と戦ってこそ本当の指導者です。 ◆「7・3」の誉れ 一、私の師である戸田城聖先生は、貴国をはじめアジア諸国を苦しめ抜いた 日本の軍国主義と戦い、2年間、投獄されました。 きょう7月3日は、恩師が出獄した記念の日であります。 この意義深き日に拝受した栄誉を、私は、わが「人生の大学」そのものであ る戸田先生に、謹んで捧げさせていただきたいのであります(大拍手)。 思想家でもあった、先ほどのルワン・ウィチット・ワータカーンの言葉に、 こうあります。 「人間が、他の動物よりも高い状態にいることができるのは、ただ一つの理 由だけである。 それは、人生の苦難と戦うことである。勇気を持って、試練に立ち向かうこ とである」と。 善のため、正義のために、あえて苦難と戦う人間こそ尊い。 私もまた、きょうよりは、貴大学の名誉ある一員として、わが愛する創大生 たちとともに、いよいよ縦横無尽に行動し、「正義の勝利の讃歌」を高らかに 謳い残しゆく決心です。 貴大学の花は、インタニンという名花だと、お聞きしました。〈百日紅(さ るすべり)の一種〉 この、まことに尊貴にして強靱なる花のごとく、貴大学が、ますます鮮やか に、爛漫(らんまん)と、人材の花また花を咲かせゆかれることを、心の底か らお祈り申し上げ、私の御礼のスピーチとさせていただきます。 まことに、ありがとらございました(大拍手)。 **************************************************************** メージョー大学一行と懇談  式典に先立ち、池田SGI会長はタイ国立メージョー大学のテープ学長一行 と懇談した。  SGI会長はプーミポン国王の在位60周年を心から祝福。国王の健康と長 寿を心から念願した。  また、横浜の戸田平和記念館で先月行われた、国王在位60周年、明年の日 タイ修好120周年を飾る特別写真展も話題に。 【池田SGI会長】 来日早々でお疲れのところ、一昨日は創価学園へ、昨日 は聖教新聞社へ訪問していただき、心より御礼申し上げます。 【テープ学長】 創価学園を訪問して、生徒のかわいらしさ、礼儀正しさに感 銘を受けました。  また聖教新聞社では、富士中学生合唱団の皆さんが、わが大学の学生たちに 歌われている「メージョー・カウボーイ」を、タイ語で歌ってくれ、驚きまし た。  そして「森ケ崎海岸」を歌ってくれました。この歌は、わが大学が運営する ラジオ局で、よく流れています。日本でも聴くことができ、大変うれしかった です。   ── テープ学長は、56歳。メージョー大学を卒業し、フィリピンに留学。 アメリカの大学で博士号を得て、再び母校に。農業事業学部長、副学長(学生 担当、学務担当、特別事業担当、外事担当)などを歴任し、2002年に学長 に就任した。  同大学は「開拓精神」を校風として、農業研究を通し、タイ社会の発展と人 材育成に尽力している。  「きょうは池田会長にお会いでき、一行全員にとって一生の宝となりました」 と語る学長。  「池田会長の声は、とても力強い響きです!」とも。  学長は、次のようにも語っている。  「労苦を惜しむ人は、人から信頼されません。池田先生が世界から慕われる のは、労苦を惜しまない人だからです。数々の顕彰は、その証明にほかなりま せん。私は、池田先生と同じ精神で、学生を育てていきたいと思っています」  夏の始まりを思わせる青空の下、"微笑みの国"の教育者の笑顔は、ひとき わ輝いていた。  語らいには創価大学の若江学長、女子短大の福島学長、タイ創価学会のソム サック議長、ソムキアット理事長、パトゥムポーン婦人部長、ナワラット副議 長、バンノ副議長らが同席した。 ****************************************************************